ごあいさつ

院長コラム第4回 運動機能や学力もアップする 子どもの足育

院長コラム第4回
運動機能や学力もアップする 子どもの足育
2017年12月17日


ライオンの無料アイコン2.png九歳の男の子に教えられた足の大切さ

 
まずは、湯川クリニックに通院していた九歳の男の子(以下、M君)のお話をご紹介しましょう。

M君は気管支喘息の治療を目的として湯川クリニックに来院しました。自然療法の中でもいくつかの治療法が考えられましたが、病気の治療には身体の歪みを正すことも重要なポイントです。

そこでM君の足に注目すると、M君の足指は少し曲がっていました。靴が小さ過ぎるようです。身体の歪みは足もとから来ていることも多いので、お母さんに靴を適切なものに変えるようにお話しました。

M君には、靴を履くときに「かかとトントン」をするように、そしてマジックテープをしっかり締めるよう指導しました。さらに普段、家にいるときも、起きている時間はずっとCSソックス(※足指を伸ばし、足のアーチを整えるように矯正するソックス)を履き続けるよう伝えました。

M君は言われた通りにまじめにそれを続けました。

 

食事指導や治療の成果もあって、半年後にはM君の気管支喘息はすっかりよくなり、めったに発作がおきないという状況まで改善が見られました。と同時に、次のような喜びの報告を受けたのです。

 

・運動会のかけっこで一番になった!

・遠足でみんなについていけるようになった!

・勉強の成績が上がってきた!

 

この喜びの報告を受けて、私は「やった!」と思いました。と同時に、足を整えることがいかに重要かということを改めて認識したのです。このことがきっかけとなり、湯川クリニックでは足を見直す指導を本格的に始めたのです。

それでは、M君にいったい何が起こったのでしょう?

 

ライオンの無料アイコン2.png足を整えると人生が変わる

M君に起こったことを詳しく解説しましょう。

まずは「運動会のかけっこで一番になった!」です。これは、M君の運動能力が突然高くなったわけではありません。靴を適切なものに変え、適切な履き方をすることで、もともとの運動能力が最大限に発揮されたということです。一流の短距離走の選手でも、スリッパを履いて走らせたら、まともな記録は出ないですよね。

以前のM君は靴のかかとを踏んづけて履くことが多く、マジックテープもまともに締めていませんでした。私はM君に適切な履き方を指導し、アームテストをしました。

アームテストとは、両手をヘソの前で組んでもらい、その手のひらの上にこぶしを乗せて、下に押し下げるというテストです。身体の重心が安定していると、力をこめて下に押し下げてもびくともしませんが、不安定だと、あっというまにぐらついてしまいます。

適切な靴の履き方をしたM君は、アームテストで自分の身体が安定したのを感じて、私の指導の正しさを実感していました。実感できていたからこそ、半年もまじめに続けられたのだと思います。

 

次は「遠足でみんなについていけるようになった!」です。以前のM君は喘息がひどかったため、ほとんど運動していませんでした。当然のことながら、体力は低下しており、喘息発作が起きていないときでも、友達についていくのにひーひー言っていました。

半年の経過で、喘息のほうが改善したこともありますが、足を整えた効果も大きかったと思います。というのは、M君に聞くと「歩くのが楽しくなった」というのです。

ちょっと歩いただけで疲れ切ってしまうようでは、歩くのが楽しくないですよね。きちんと靴を履くことで身体のバランスが整い、歩くときに無駄な力を必要としなくなったので、楽に歩けるようになったのです。楽しいことがどんどんできるから、M君はたくさん歩くようになり、その結果、遠足でもみんなについていけるくらいの体力がついたのです。

 

最後の「勉強の成績が上がってきた!」です。これは「足」とは関係ないだろう、と思う人がほとんどだと思います。ところが大いに関係があるのです。

足のバランスが悪いと、一般的には猫背になり、さらには首を突き出すような格好になってしまいます。すると、呼吸が浅くなり、脳に供給される酸素の量が減ってしまいます。その結果、集中力が持続できなくなり、勉強にも身が入りにくくなります。

M君は足のバランスを整えることで、猫背が改善し、呼吸が深くなり、集中力が回復したのです。つまり、十分な酸素が脳に供給されることにより、脳の働きが正常の状態に戻ったわけです。

 

いかがでしょうか?

運動音痴で、体力なし、勉強の成績も悪いM君。
運動ができて、体力があって、勉強の成績もよいM君。

どちらの人生が今後いきいきとしたものになるか、一目瞭然ですね。

 

ライオンの無料アイコン2.png足の異常が疑われる症状

 

それでは、足に問題があると、どのような症状が起こる可能性があるでしょうか?

あなたのお子さん、お孫さんに次のような症状がないか、チェックしてみて下さい。

 

・長く歩くと疲れる

・歩いているときに躓く

・足をくじきやすい

・まっすぐに走れない

・走るとすぐ転ぶ

・猫背が気になる

・身体が左右のどちらかに傾いている

・噛み合わせが悪い

・まっすぐに立っていられない

・朝早く起きられない

・腰が痛い

・頭が痛い

・身体を動かすことが苦手

・集団行動より個人行動が多い

 

思いつくものをランダムに書いてみました。もちろん、すべての症状の原因が「足」にあるとは言えません。しかし、これらの症状を訴える患者さんの中には、足を整えるだけで劇的に改善する例があることも事実なのです。

最初の五つの症状は足に関係しているので、容易に理解できると思います。しかし、そこから後に列挙された症状が足とどう関係するのでしょう?

 

実は足のバランスが悪いと、全身の骨や関節のバランスが崩れてきます。骨や関節のバランスが崩れると、それを支える筋肉のバランスも崩れ始め、いろいろなところに症状が出てきます。腰椎のバランスが崩れると腰痛、頸椎のバランスが崩れると頚部痛や肩こり、場合によっては頭痛まで生じます。さらには、脊椎の近くを通っている自律神経にも影響を与え、めまいなどの症状の原因になることもありえます。

たかが足の異常と侮るなかれ。足のバランスが悪いだけで、これだけの不調が起こりうるのです。

 

ライオンの無料アイコン2.png足の状態を改善するには

 

では、足の状態を改善するにはどのようにすればいいのでしょうか?ポイントは三つあります。

①足指を伸ばし、足のアーチを整える

今の子どもたちの多くは、狭い靴を履いていることが多く、かつ運動不足のため、足指がしっかりと働いてくれません。そのため、浮指、かがみ指、寝指などが非常に多いのです。ひどい子になると、外反母趾が始まっている場合もあります。まず、この状態を正しい状態(五本の指が伸びている状態)に戻してあげることが必要です。前述したCSソックスがこの役割を果たしてくれます。

 

②良い靴を適切な履き方で履く

靴の選び方は重要です。まずは大きさのあったものを選ぶこと。子どもの足は成長が早いので、成長に合わせて選ぶ必要があります。次に、靴のかかと(カウンター)がしっかりしていること、足首がしっかり締まること、足指が動くスペースがあること、靴がねじれないこと、なども重要なポイントです。

履き方としては、かかとトントンをしてもらって、靴のかかととお子さんのかかとを合わせること、足首の部分のひも(またはマジックテープ)をしっかり締めることが大切です。

 

③よく歩く

せっかくよい靴を買っても、歩かないと意味がありません。正しいバランスとなった足で歩くことによって、足そのものの筋肉が鍛えられるとともに、足が良い状態を覚えこんでいくのです。さらには、バランスのよい状態で歩くことで、体幹を始めとした全身の筋肉が鍛えられ、足自体への負担も減っていきます。

 

ライオンの無料アイコン2.pngまとめ

M君の改善例を紹介し、足の異常でどんな不調が起こるか、それを改善するにはどうすればよいかを解説しました。今回は、子どもの足育ということでお話しましたが、実は大人にも全く同じことがいえるのです。お父さん、お母さんも「足」のことに意識を向けて、全身の症状を足もとから見直していって下さい。



 

※この文章は2017年12月17日に開催された第4回湯川クリニック健康講座補講のために書き下ろした文章です。