ごあいさつ

院長コラム第2回

院長コラム第2回
食事を変えると身体はここまで変わる  
2017
年10月22日



ライオンの無料アイコン2.png私が食事療法に関心を持ったわけ
まず、私がなぜ食事療法に関心を持ったのか、について述べたいと思います。

私は子どものころから病弱で、頻繁に喘息発作を起こしていたため、薬漬けの日々を送っていました。
薬を服用し続けていれば、それなりに発作なしで過ごせていたのですが、時々はひどい発作を起こすことがありました。それが、ある体験をきっかけとして、何とか薬を使わずに治したいと思うようになったのです。

そのときに最初に出会った食事療法が「生菜食療法」でした。この食事療法を受けるために大阪のクリニックに通院し、指導を受けました。
この療法では、食べていいものが極めて限られていて、青汁、玄米粉、豆腐だけでした。また、飲み物は柿茶と水に限られていました。これにより、腸内環境を徹底的に改善し、宿便を出し切ろうという方法です。

指導された当初は厳密に守っており、約半年で体重65キロから51キロまで減りました。
それと同時に体調が劇的に改善されたのです。
まず、喘息発作がほとんど起こらなくなったのと、さらには風邪をひきにくくなった、疲れにくくなった、などいいことづくめでした。

これをきっかけに、食事を変えると病気が改善する、ということを意識し始めたのです。

そういえば、医学部では栄養学のことを全く学んでいなかったなぁ、と思いを馳せつつ、栄養関係の本を読みあさり始めました。
病気を治すはずの立場の医者がなぜ栄養のことに無関心なのか、不思議に思ったことはないでしょうか?
医者は栄養学を全く学んでいないため、そもそも食事と病気に関係があるということを知らないのです。それなら、自分がそういう立場の医者になればいいと考え、栄養学や食事療法をより深く学びたいと思うようになったのです。
 
ライオンの無料アイコン2.png食事療法があまりにもたくさんある
 
いろいろ学んでいくうちに混乱してきたのは、あまりにいろいろな食事療法があるのと、そのそれぞれが相容れない主張をしばしばしているということでした。

例えば、私が最初に行った「生菜食療法」。これは現代栄養学的にいえば、完全に栄養失調になる食事法です。したがって、現代栄養学の先生であれば絶対に勧めることはないと思います。しかし、現実におこったことは栄養失調でフラフラになるという症状ではなく、体重が減ったことで身も心も軽くなり、さらに喘息の発作も減るという現象でした。

実をいうと完全な生菜食療法は一年弱でやめていて、そのあとはもう少しゆるい食事療法に移っていったので、ずっと生菜食療法をやっていたらどうなったかは分かりません。しかし、少なくともこの一年弱の間は、この食事療法がうまくいっていたことは確かなのです。

もちろん、この体験談は私個人の体験であり、普遍化するわけにはいきません。したがって、患者さんに指導するためには、もう少し研鑽を積む必要がありました。
 
ライオンの無料アイコン2.pngさまざまな食事法を学ぶ
 
自力で病気を治し、薬が全く必要なくなって以来、さまざまな食事法を学んできました。列挙すると以下の通りです。実行するのがかなり大変なものから、始めるのに比較的ハードルが低いものまでいろいろ混ざっています。
 
・生菜食療法
・断食療法
・伝統和食療法
・マクロビオティック食事法
・縄文式ダイエット
・ナチュラルハイジーン
・低GI食
・ゾーンダイエット
・地中海式ダイエット
 
これらの中でもさらに細かい流派があり、例えば、マクロビオティックと一言で言っても、アメリカで流行した久司マクロと日本で広がったマクロビオティックではかなり内容が異なります。

さらにここ数年でブームになった、糖質制限食やアトキンスダイエットについても、かなり詳細に学びました。

糖質制限食に関しては、関心のある方が多いと思われます。自分がやってみた体験談のある方もいるでしょうし、身近な家族や友人がやっていて、それに対してどうアドバイスしたらいいか迷っている方もいると思います。これに関しては、書きたいことがたくさんあるので、稿を改めて書きたいと思っております。
 
ライオンの無料アイコン2.pngどの食事法が適切なのか?
 
ここまで読んできて、「私は一体何を食べればいいんだ?」と思った方もいるでしょう。ごもっともです。しかし、その答えを私が用意することはできないのです。

人はそれぞれが唯一無二の存在で、体質も十人十色です。また、同じ人であっても、年齢や環境によって、適切な食べ方は変わってくるのです。三十歳代でこの食事がベストだと思って始めた食事法が、四~五十歳代になり合わなくなってきたというのは十分ありうる話です。また、寒い地方に住んでいたときは生野菜など食べる気もおきなかった人が、暖かい地方に移り住んで生野菜をたくさん欲するようになるということも十分にありえます。

私自身が学んできた中で、一般論を伝えることはできます。有名な雑誌に載った論文には、数千~数万人規模の臨床データを集めて結論を導いているものもあり、これらは一般論としては信憑性が非常に高いと言えます。

また、それぞれの食事法を行ううえで注意すべき点についてアドバイスすることも可能です。食事法を試して現れた変化について、臨床経験の中から、おそらく正しいであろう答えをコメントすることもできると思います。
しかし、私にできるのはそこまでです。あとは自分自身で実践してみて、どのような変化が自分に起こるのかを意識しながら、微調整していくということが大切になります。

私自身も、常に自分の体の変化を見つめて食事を臨機応変に調節していく、ということを怠らずに続けています。食べたものと体調の関係で、気づいたことがあればすぐにメモし、それに関連する論文がないか調べるという作業をいつもやっています。
また、身体にとって悪いものが入ってきたときには、たいていの場合、下痢という反応がおこるので、自分にとって何が悪いのかを判別する手がかりになります。
 
ライオンの無料アイコン2.png食事を変えると身体が変わる
 
「食事を変えると身体が変わる」というのは、私自身の体験からも言えることであると同時に、今まで積んできた臨床経験や多くの論文のデータなどから明らかだと思います。

ただ、最終的な答えは自分自身で見つけ出してほしいのです。

食事法にも流行りすたりがあります。ここ数年は糖質制限食がブームでした。糖質制限食に関しては、医者(特に糖尿病専門医)も多くが関心を示しており、既に多くの臨床研究の論文が発表されています。糖質制限食が適切な形で生き残っていくか、あるいは一時的な流行で終わってしまうかは、現時点ではわかりませんが、一部の人には有用な食事法である可能性はあります。

一方、「一日三十品目」にとらわれて副食中心の食事をしていたのを、主食のご飯をしっかり食べるように変えてから元気になったという方もたくさんいます。

ですから、試したい食事法がありましたら、まずは試してみて下さい。そして、どのような結果が出るかを確認して下さい。

自分の身体の声を聴くことを習慣にすれば、いろいろな気づきが生まれてくるでしょう。わからないことがあれば、専門家に聞いて下さい。きっと有益な情報が得られます。
その情報をもとに、少しずつ修正を加え、自分自身に最も合った食事法を見つけ出して下さい。
このプロセスを経ることによって、食事を変えると身体が変わることを確信できるようになるはずです。


※この文章は2017年10月22日に開催された第二回湯川クリニック健康講座のために書き下ろした文章です。